③在来種のモニタリング状況【奄美大島のノネコ管理計画 令和3年度の検討会行ってきましたレポ】

こんにちはー。

今回も前回に引き続き、令和3年度の奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画に係る検討会レポを綴っていきます。

今回は在来種のモニタリング状況ということで、奄美大島のノネコ管理計画で在来種に変化は見られたのかという部分を見て行きましょうね。

「奄美大島のノネコ管理計画って本当に意味があるの?」

と、ノネコ管理計画自体に疑問を持っている方などはこちらのモニタリング状況、毎年チェックしていくと良いかもしれませんね!

では参りましょー。

目次

在来種のモニタリング状況

「在来種のモニタリング状況」では、奄美大島のノネコ管理計画で在来種はどのように変化しているかのモニタリング状況がわかります。

ただ生き物の話ですから、猫を山から出したらすぐに固有種が増加とはいかないのでその点は念頭に置いてもらえると助かります。

ここでは

  1. 在来種モニタリングの方法
  2. 自動撮影カメラによるモニタリング結果
  3. アマミノクロウサギ糞塊調査結果
  4. 在来種モニタリングのまとめ

この4点がわかります。

在来種モニタリングの方法

センサーカメラによるモニタリング

対象種

アマミトゲネズミ、ケナガネズミ、アマミノクロウサギ、ヤマシギsp.、トラツグミsp.

※sp.とはSpecies=種族という意味です。なのでヤマシギsp.はヤマシギ属の一種ってことになります!教えてくれた奄美水生昆虫同好会メンバーのレッドさんありがとうございます。

どのようにまとめたか
  • 捕獲作業地域ごとに在来種の撮影枚数をとりまとめる
  • 種ごとに総撮影率を算出、捕獲作業の効果を検証
  • 2021年度より始めた作業地域はモニタリング開始も間もなかったので、検証は2018年度よりデータ収集している旧捕獲作業地域1~3の結果を使用
  • 2021年度は4月から1月末までのデータを使用
総撮影率の出し方

稼働していた全てのカメラの撮影枚数合計÷カメラ日×1,000=総撮影率

アマミノクロウサギ糞塊調査

どのようにまとめたか
  • 捕獲作業地域ごとに1本の調査ルートを設定
  • 月1回の頻度でアマミノクロウサギ糞塊数をカウント
  • 調査ルートはノネコの生息が確認されていて、アマミノクロウサギの回復がまだ見えないところや回復の兆しが見えてきた場所を中心に設定
  • 糞の幅が10mm以下のものを幼獣の糞、10mm程度の糞が混在しているものを成獣の糞とし糞塊をカウント
  • 2020年度まではルート番号1~9で調査していたが、作業地域区分が変更になったため2021年度から作業地域ごとに1つの調査ルートを設定

自動撮影カメラによるモニタリング結果

  • アマミノクロウサギは全域で開始時より増加傾向
  • ケナガネズミは捕獲作業地域1で昨年度までは撮影がほぼなかったが今年度は増加、他2地域でも開始時より増加傾向
  • アマミトゲネズミは捕獲作業地域1でほとんど撮影されななかった、作業地域2では作業開始より横ばい推移、作業地域3では減少傾向
  • トラツグsp.は捕獲作業地域1ではほぼ撮影されず、他2地域では開始時より増加傾向
  • ヤマシギsp.は作業地域3ではやや横ばい推移、他2地域で開始時より増加傾向

グラフはあったんだけど、折れ線グラフだったからこの記事には載せられなかったよ!どこかで詳細なデータなど出てきたらその時また、書こうと思うよ。

アマミノクロウサギ糞塊調査結果

2021年度の捕獲作業地域ごとの調査結果

※()は幼獣糞数

スクロールできます
4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月
金作原0000000001
三太郎29(2)19222422(1)71662(1)12
小湊11625(1)27(2)169121449
山間2(4)10395175(2)1310(1)1121(2)
湯湾岳3211(1)3242123(1)
赤房1322220200
篠川0000200000
瀬戸内0000102(1)000
網野子24721117128(1)277
捕獲作業地域ごとのルート1kmあたりのアマミノクロウサギ糞塊数ー検討会資料より
  • ルート間の糞塊数の差は大きかった
  • ルート単位でみると月ごとに増減があるが一定の増加傾向はない
  • 幼獣糞は金作原、赤房、篠川を除いた6地域で確認

金作原ではずーーーーっと0だったのに、2022年1月に突然1になってるの、これもう嬉しいですよね、控えめに言って最高。

旧捕獲作業地域の調査結果

2020年度のアマミノクロウサギ糞塊調査数

※①=捕獲作業地域1、②=捕獲作業地域2、③=捕獲作業地域3、④=捕獲作業地域4

()は幼獣糞数

スクロールできます
2020年度4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月平均
①1km1100103173311.75
②1km167(1)47292760571931920.67
③4km1.751.511.42.21.53.751.758.511.25(3.5)7.33(1)4.25(1.25)3.69
④1km2341213412(9)11(1)1011(3)47.17
旧捕獲作業地域1~4のルート1kmあたりのアマミノクロウサギ糞塊ー検討会資料より

2021年度のアマミノクロウサギ糞塊調査数

※①=捕獲作業地域1、②=捕獲作業地域2、③=捕獲作業地域3、④=捕獲作業地域4

()は幼獣糞数

スクロールできます
2021年度4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月平均
①1km0000102(1)000.33
②1km
③4km1137.674.33343.3(0.3)92.34.07
④1km4668(1)12262123(1)4.20
旧捕獲作業地域1~4のルート1kmあたりのアマミノクロウサギ糞塊ー検討会資料より

アマミノクロウサギ糞塊調査まとめ

  • 作業地域2はルート見直しにより地域内に調査ルートの設定がないので、2020年度までの結果
  • 夏季を比較すると今年度は増加傾向、秋季から冬季にかけて比較すると捕獲作業地域4を除き昨年度同時期よりも低値
  • 今後もデータを蓄積して傾向を把握していく

在来種モニタリングのまとめ

自動撮影カメラによるモニタリングまとめ

  • アマミノクロウサギ・ヤマシギsp.・トラツグミsp.は作業開始後からそう撮影率に増加傾向
  • 旧捕獲作業地域1、他地域と比べいずれの種も撮影率や増加率が少ない
  • ノネコの繁殖・他地域等からの個体侵入が影響している可能性
  • データ蓄積が少ないので今後も作業継続し動向を把握していく

アマミノクロウサギ糞塊調査まとめ

2021年度の地域ごとの糞塊調査月別結果

  • 糞塊数の増減や幼獣糞の出現に季節変化なし

旧捕獲作業地域ごとの糞塊調査月別結果

夏季2020年度の同時期と比較し、やや増加傾向
秋季から冬季2月以降のデータがないが、昨年度より低値
  • データ蓄積が少ないので今後も継続し動向把握

質問タイム

アマミノクロウサギの糞塊調査ルートはどこですか?

ノネコ捕獲作業をしている道路上です。

糞塊調査のルートが変わったが、どちらも条件は同じですか?

どちらも同じような条件でルート設定しています。

センサーカメラの位置はどの辺ですか?

罠の近くだと罠の餌で誘引してしまう可能性があるので、カメラを設置したところへ罠の影響がないところなどに罠を設置している。カメラ自体はあまり動かさずに今後も継続していく予定です。

糞塊調査の図で、糞が一時的に発見されてすぐ消えちゃうパターンがいくつかあるが、これは何が原因かはわかるのでしょうか?要因の推測などあれば教えてください。

2018年の7月から作業しているが、例えばノネコ捕獲した道路だと全然糞がなかったのに、ある日突然糞がぽっと現れるので、ノネコがいなくなったら現れる感覚はありますがデータとしてはまだしっかり出ているわけじゃないので、今後に期待している。

林道の草刈りなどでもアマミノクロウサギが出てこなくなったりもあるのでそういうのも考えたほうが良い。

質問以外

  • 金作原で初めて糞が1月に発見されたところに注目している。金作原はちょうどマングースの影響でアマミノクロウサギがいなくなってしまったところ。中々回復が進まず、一方でノネコの糞が見つかってノネコの糞からアマミノクロウサギが見つかったことから、ノネコがアマミノクロウサギの回復を抑えていた感じがあった。今回金作原から恐らく初めてアマミノクロウサギの糞が見つかった。これはとても貴重なデータだと思う。
  • 短期間のデータでは中々検証が難しいので、今後もデータをとりつづけてほしい。
  • 捕獲効果をしっかり見るために、作業が始まってないエリアは事前に調査するともっとビフォー・アフターがわかりやすくなるのではないか。
  • 糞塊調査は悩みながらやってきたが、段々とやり方が確立されてきた。

次回へ続く!

奄美大島のノネコ管理計画では、ノネコを捕獲することばかり取り上げられがちですが、このようにモニタリングも続けられています。

ちゃんと効果を検証するために、そして保全の研究の面も併せ持っているわけですね。

まだ4年目なので、奄美大島の固有種が沢山増えたー!とまでいかないのは想定内、これからも毎年の報告を楽しみにしておきましょう。

センサーカメラでのモニタリングでは、ノネコの繁殖・流入などで増加が少ない可能性があるともありましたので、そこも気になるところです。

糞塊調査は方法が確立してきたとのことなので、これはとても素晴らしいですよね!

試行錯誤しながらデータを積み重ねてきた結果でしょうから、もうこれは本当にすごいことだし、これからも楽しみにしています!

では次回は皆さんが恐らく気になっている「発生源対策の進捗とTNR事業との連携について」です。

こちらももうしばらくお待ちくださいねー。ではまた!

サイトの管理人

奄美大島在住。生き物ニワカ勢です。ネコも割と好き。イヌも可愛いと思うし、クロウサやカエルやヘビも好きだし、でも名前が覚えられないからずっとニワカ。そのへんにいます。検討会行ってるのはただの趣味。色々思うことはあるけど、思うことがあるだけで覚えてないので言えることがあまりない毎日を過ごしています。でも楽しいです。

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